日々、教育に明け暮れる先輩看護師としては最近の新人に対していろいろと不満があるようですが、一方の新人もこんなことを思っているようです。
「先輩はよく、『見て覚えて』なんて言うけど、そんな一回や二回見ただけでは覚えられません。やっていることが簡単なことじゃないし、しっかり理解してからやった方がいいと思う」
「何も分からない新人が下手に手を出してはいけないと思って見ていますが、それで『積極性がない』なんて言われても…。何をしたらいいのかはっきり教えてほしい」
「先輩たちの時代はスパルタ式というか、厳しくやっていたらしいですが、今は時代が違います。理不尽にガミガミ言われても私たちは反発するだけですし、ちゃんと理屈で説明してもらわないとついていけません」
「私は何も分からないような状態なのに、先輩たちはとにかく忙しそうにしていてほったらかしにされています。やれそうなことからやってみたりしていますが、勝手にしないでと先輩から怒られることもあってどうしたらいいのか分かりません」
「私は看護師であっても、『仕事は仕事、プライベートはプライベート』としっかり分けて働きたい。だからなるべく残業などしたくないし、仕事も無駄を省いて効率よくこなしたい」
どれも最近の若者が言いそうな内容ですが、やはり彼らより上の世代としては「ちょっと自分勝手だな」とか「甘えたことを言っているな」と思ってしまいます。もちろん、今の新人看護師が全てこんなことを言っているわけではなく、逆にもっと非常識な事(先輩からすれば)を言う新人もいます。実際、先輩後輩でうまくやっているケースも多く、こうしたすれ違いも本当は一部の話なのかもしれません。
最近の若者たちは子供の頃から便利なものに囲まれていた世代で、義務教育時代の方針も昔とは違っていました。彼らが見ているアニメなども昔とはずいぶん内容が違っていて、「努力・根性」などよりも「ユルさ・都合のよさ」の方が好まれる傾向です。そのせいか、一般的にも「依存度が高い」「自分から動いていこうとしない」といった批判的意見を浴びることになっています。
新人に指導をする世代もだいたい30代から40代あたりが多いようですが、その世代はまだ昔の「厳しさ」が残っていた時代です。自分が厳しく指導されてきたように、今の新人を指導しなくてはと思うのも当然ですが、今の新人はもはやそれが通用しない相手と考えるしかありません。心理療法の考え方の一つに「原因と結果の間には個人の受け取り方があって、それが結果の判断に影響している」というものがあります。
これは例えば、なかなか看護技術が身につかない新人がいるとして、それを単に「最近の若者だから」という原因を求めるのではなく、自分が「新人はこうして覚えるもの」「新人はもっと熱意を持って勉強するもの」といった思い込みを持っているせいで、なかなか仕事が覚えられない(と感じている)新人に悪い判断を下したりする、ということです。
新人に対しては「こういう価値観を持った人たちなんだ」と思って接することになりますが、自分の使ってきた常識を押しつけるだけでなく、彼らの考え方を理解すれば歩み寄りもしやすくなるのではないでしょうか?